2025/07/31

持ち家ありの夫婦に必要な老後資金はいくらあれば安心?内訳や調べ方も

持ち家ありの夫婦に必要な老後資金はいくらあれば安心?内訳や調べ方も

持ち家のある夫婦にとって、老後に必要な資金の内訳や金額は大きな悩みとなる要素です。必要な資金を把握し、老後に対応した家をあらかじめ建てることで、不安を軽減できるでしょう。

この記事では、持ち家ありの夫婦に必要な老後資金の目安や内訳、資金の増やし方や持ち家の活用方法などを解説します。

すでに持ち家のある人や、これから家の購入を検討している人は、ぜひ参考にしてください。

【この記事でわかること】

  • 持ち家ありで必要な老後資金の目安
  • 持ち家ありでかかる老後資金の内訳
  • 持ち家ありの夫婦に必要な老後資金の調べ方
  • 老後における持ち家の活用方法

持ち家ありの夫婦に必要な老後資金はいくらあれば安心?

老後資金として必要な金額は、一般的に2,000万円〜3,000万円程度だといえます。ただし、健康状態や生活の水準などによって変わる点に注意が必要です。

総務省統計局のデータ(※)によると、65歳以上における夫婦無職世帯の実収入は社会保障給付やその他収入を合計して25万2,818円でした。消費支出は平均25万6,521円、社会保険料などの非消費支出3万356円を合計して平均286,877円とすると、赤字は3万4,058円です。

このことから、約3万4,000円の消費支出(赤字)を最大30年で計算した場合、不足分が約1,226万にも及ぶため、不足分を補えるだけの貯蓄が必要になります。

前述のとおり、老後資金は健康状態や生活の水準などによって変わるため、予備費としてさらに用意するのが大切です。

※参考:家計調査報告家計収支編2024年(令和6年)平均結果の概要(表1)|総務省統計局の調査

ここからは、高齢世帯の金銭に関する以下を解説します。

  • 高齢世帯の平均貯蓄額
  • 高齢世帯の住宅・土地に関する平均負債額
  • 高齢世帯の平均生活費

高齢世帯の平均貯蓄額

総務省の家計調査報告書(2024年)によると、高齢世帯の1世帯あたりの平均貯蓄額は約2,560万円でした。以下は、65歳以上の平均貯蓄額をまとめた表です。

貯蓄額 65歳以上二人世帯
2,500万円以上 35.2%
300万円以上〜2,500万円 50.0%
300万円未満 14.8%

※参考:家計調査報告貯蓄・負債編2024年(令和6年)平均結果の概要(二人以上の世帯)(P22)|総務省統計局

参照すると、2,500万円以下の世帯が3分の2を占めており、2,500万円以上の世帯は3分の1を占めています。平均値は少数の高額資産保有世帯によって引き上げられています。

高齢世帯の住宅・土地に関する平均負債額

総務省によると、2人以上の世帯における2024年の負債現在高(1世帯あたり)は663万円で、前年に比べて8万円(1.2%)の増加となっています。

また、約3分の2の世帯が貯蓄現在高である1,984万円を下回っていることもわかりました。

ただし、50歳以上の世帯主では貯蓄超過となり、60〜69歳の世帯における総貯蓄額は2,389万円と最も高いことから、高齢世帯では負債額よりも貯蓄額のほうが多いといえます。

※参考:家計調査報告(貯蓄・負債編)|総務省統計局

高齢世帯の平均生活費

総務省によると、高齢世帯の平均生活費は月額約25万6,521円です。この金額は、高齢夫婦無職世帯を前提に算出しているため、高齢単身者なら生活費はより少なくなるでしょう。

※参考:家計調査報告家計収支編2024年(令和6年)平均結果の概要(表1)|総務省統計局

持ち家ありの夫婦に必要な老後資金の内訳

ここでは、持ち家ありの夫婦に必要な老後資金の主な内訳を表にまとめました。

夫婦高齢者無職世帯の支出

内訳 月平均支出
消費支出 25万6,521円
食料 7万6,352円
住居 1万6,432円
光熱・水道 2万1,919円
家具家事用品 1万2,265円
被服及び履物 5,590円
保険医療 1万8,383円
交通・通信費 2万7,768円
教育 0円
教養娯楽 2万5,377円
その他の消費支出 5万2,433円
諸雑費 2万2,125円
交際費 2万3,888円
仕送り金 1,040円
非消費支出 3万356円

※参考:家計調査報告家計収支編2024年(令和6年)平均結果の概要(表19)|総務省統計局の調査

消費支出は生活費や家計費といわれています。非消費支出は税金関係など間接的な支出のことで各家庭によって異なるため、上記は目安として把握しておくとよいでしょう。

持ち家ありの夫婦に必要な老後資金の調べ方

持ち家ありの夫婦に必要な老後資金の調べ方として、以下が挙げられます。

  • 毎月の支出額を明確にする
  • 年金支給額を明確にする
  • 実際にシミュレーションする

毎月の支出額を明確にする

老後資金にいくら必要になるか把握するためには、毎月の支出額を明確にするのも大切です。

持ち家の場合、固定資産税も考慮しておく必要があります。具体的な支出額を明確にするには、家計簿や固定費を見直し、住居費を除いた生活費の実額を確認することが重要です。

年金支給額を明確にする

年金支給額を明確にすることで、老後に必要な資金を算出できます。また、老後に必要な支給額は、国民年金や厚生年金以外に私的年金などから支給されます。

自身が加入している国民年金や厚生年金は、「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」などで将来の受給見込み額を確認できるため、把握しておきましょう。

実際にシミュレーションする

老後資金の調べ方として、実際にシミュレーションするのも有効な手段です。

支出額と年金額を考慮し、年齢を70代・80代・90代と個々にシミュレーションするのがおすすめです。より長くシミュレーションすることで、老後の生活に必要な資金を把握できます。

シミュレーションは、金融機関のサイトや金融庁のシミュレーターなどで可能です。

※参考:ライフプランシミュレーター|金融庁

※参考:老後資金シミュレーション|JAバンク

持ち家ありの夫婦に必要な老後資金の増やし方

ここでは、持ち家ありの夫婦に必要な老後資金の増やし方として以下を解説します。

  • 老後も働き続ける
  • 貯蓄型保険に加入する
  • 資産運用を検討する
  • 年金の繰り下げを行う

老後も働き続ける

持ち家ありの夫婦に必要な老後資金を確保するためには、老後も働き続けることが選択肢として挙げられます。たとえば、シルバー人材センターやパート、定年後の再雇用などが有効です。

シルバー人材センターとは、高齢者などの雇用の安定などに関する法律に基づき、原則として市区町村ごとに設置されている機関です。

企業や家庭、公共団体などから仕事を引き受け、シルバー人材センターの会員に仕事を提供しているため、老後も働き続ける人は選択肢として把握しておきましょう。

※参考:シルバー人材センター

貯蓄型保険に加入する

持ち家ありの夫婦に必要な老後資金の増やし方として、貯蓄型保険に加入するのも選択肢の1つです。

貯蓄型保険とは、保障を受けながら貯蓄できる保険で、満期時や解約時にお金を受け取れます。

定期的な保険料支払いで、老後に一定額の給付を受け取れる保険であるため、老後も安心できるでしょう。

※参考:貯蓄保険|公益財団法人生命保険文化センター

資産運用を検討する

持ち家ありの夫婦に必要な老後資金の増やし方として、資産運用を検討するのも選択肢として有効です。資産運用の種類として、主に以下が挙げられます。

  • 預貯金
  • 外貨預金
  • 株式投資
  • 投資信託
  • FX

上記以外にも資産運用の種類が多くあり、状況にあわせて資産形成を行うのが有効です。ただし、FXなどのリスクを伴うものもあるため、計画的に行うことを推奨します。

※参考:資産形成の基本|金融庁

年金の繰り下げを行う

持ち家ありの夫婦に必要な老後資金の増やし方として、年金の繰り下げをして受給額を上げるのも有効です。

老齢基礎年金や厚生年金は、通常66歳〜75歳の間で繰り下げて受け取ることも可能です。

また、老齢基礎年金や厚生年金の両方に加入している人は、別々に繰り下げる選択肢もあります。注意点などさまざまあるため、詳細は日本年金機構で聞くのがおすすめです。

※参考:年金の繰り下げ受給制度|日本年金機構

老後における持ち家の活用方法

ここでは、老後における持ち家の活用方法として以下、順に解説します。

  • リフォーム・建て替えを検討する
  • リバースモーゲージを活用する
  • 賃貸に出す
  • 売却する

リフォーム・建て替えを検討する

持ち家の活用方法として、リフォームや建て替えによってバリアフリー化や老朽化対策で住みやすくすると、老後の生活安定につながります。

病気や怪我で障害などを抱えたときに、既存の住宅では生活できない場合もあるので、老後の暮らしにあわせてリフォーム・建て替えを行うのは有効な手段です。

ただし、施工内容によっては高額な費用がかかるので、抑えたい人は国や各自治体の補助金制度を有効活用しましょう。

※参考:公益財団法人 生命保険文化センター

※参考:住宅リフォームの支援制度|国土交通省

リバースモーゲージを活用する

持ち家の活用方法として、リバースモーゲージを活用しながら生活費を工面するのも選択肢の1つです。

リバースモーゲージとは、自宅を担保にして毎月のお金を借りる制度で、住み続けながら老後資金に充てられるのがメリットです。ただし、徐々に借入残高が増えていく点に注意が必要です。

※参考:リバースモーゲージとリースバック|国民生活センター

賃貸に出す

持ち家の活用方法として、住宅を賃貸に出すことで家賃収入を得るのも有効な選択肢の1つです。賃貸に出すメリットとして、主に以下が挙げられます。

  • 住宅の貸付けは非課税
  • 家賃収入にできる
  • 自宅を手放さないで有効活用できる
  • 人が住むことで物件や設備の劣化を防ぎやすい

注意点として、管理会社の選定や賃貸人としての手続きが複雑になる場合があるため、選択肢の1つとして把握しておきましょう。

※参考:住宅の貸付け|国税庁

売却する

老後における持ち家の活用方法として、現在の住まいを売却して住み替えや資金確保に充てる選択肢もあります。

たとえば、以下のようなニーズを持つ人にとって、住まいの売却は今後の暮らしを整えるための手段として有効です。

  • 階段の上り下りが辛くなった
  • 子どもが独立して部屋数が余っている
  • 郊外の広い住宅よりも駅近で管理がラクなマンションに住み替えたい など

自宅を売却することでまとまった資金が得られ、医療費や介護費用、趣味の費用などに回すことも可能になります。

また、住み替えを目的に自宅を売却する場合、一定の条件を満たすと最大3,000万円の特別控除を受けられます(※1)。さらに、前後2年以内に新居を取得すれば、売却益への課税を将来に繰り延べる特例(※2)の活用も可能です。

これらの税制優遇を上手に利用すれば、老後資金への負担を抑えながら、より暮らしやすい環境への移行を図れるでしょう。現状の住まいが老後の生活スタイルに合っていないと感じる場合に検討したい選択肢だといえます。

※参考1:マイホームを売ったときの特例|国税庁

※参考2:特定のマイホームを買い換えたときの特例|国税庁

持ち家や老後資金に関するよくある質問

最後に、持ち家や老後資金に関するよくある質問を紹介します。

  • 老後資金を用意するタイミングはいつからがベスト?
  • 老後資金がない人の割合は?
  • 持ち家ありで必要な最低生活費はいくら?

老後資金を用意するタイミングはいつからがベスト?

老後資金を用意するタイミングは人によってさまざまですが、一般的には早いタイミングで準備すると負担がラクになるでしょう。

老後資金の準備を行うための制度として、60歳まで掛け金によって公的年金とは別に給付を受けられるiDeCo(個人型確定拠出金)などもあります。

老後資金がない人の割合は?

総務省統計局によると、老後資金が100万円未満(0円も含む)の割合は10.2%でした。

前述したデータでは、貯蓄額が負債額を上回っている高齢世帯が多く見られましたが、中には老後資金を用意していない世帯もいるようです。

※参考:家計調査報告貯蓄・負債編2024年(令和6年)平均結果の概要(二人以上の世帯)|総務省統計局

持ち家ありで必要な最低生活費はいくら?

公益財団法人生命保険文化センターの調査によると、老後に最低限必要と考える日常生活費は月額平均で23.2万円となっています。

ただし、各家庭によって異なるため、あくまで参考程度として押さえておきましょう。

持ち家で生活するなら老後資金を用意しておくことが重要

長く住み慣れた持ち家で老後を過ごすには、生活費や医療・介護などに備えた老後資金の計画が非常に重要です。仮に住宅ローンを完済していても、税金や修繕費、設備更新など、見落としがちな費用は意外に多く、あらかじめ把握しておくことで将来の不安を軽減できるでしょう。

また、今の住まいが老後のライフスタイルに合っていない場合には、住み替えやリフォームなどの選択肢も現実的です。段差のない間取りや駅・病院が近い立地など、将来を見据えた住環境を選ぶことが、安心と快適さにつながります。

シンプルホームでは、月々の支出や将来の家計負担を踏まえながら、老後を見据えたマイホーム計画をご提案しています。現在の住まいに不安がある方、新築や住み替えを検討している方は、ぜひ一度ご相談ください。

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